「チョコ停」とは、何らかのトラブルにより生産機械が短時間停止すること。短時間とはいえ業務効率に響くため、多くの製造現場で悩みのタネとなっている。このチョコ停の原因分析と再発防止に役立つのが「ミランダVR」だ。工場内の監視カメラとシーケンサのデータを同期して記録・再生できる点が評価され、さまざまな業種の製造現場に導入されている。最近では、業務効率アップやトラブルを未然に防ぐ予防保全の目的で「ミランダVR」を活用する工場も出てきている。
INDEX
- 製造現場を悩ませる“チョコ停”を「ミランダVR」が解決!
- 製造業で嫌われる業界用語「チョコ停」とは
- チョコ停で生産効率はどれだけ悪化する?
- 「ミランダVR」で機械の中身を見える化
- 「いちばん怖いのは“だんまり停止”」
トータルソリューション事業所 営業部
林孝士さん
製造現場を悩ませる“チョコ停”を
「ミランダVR」が解決!
製造業で嫌われる業界用語
「チョコ停」とは
「またチョコ停だよ……」
このセリフが聞こえるときは、工場内に重い空気が垂れ込めているに違いない。「チョコ停」とは、何らかのトラブルによって製造機器が“ちょこっと停止”すること。生産現場で使われる業界用語のひとつだ。
なぜチョコ停が起きるのだろうか? そして、チョコ停が現場に与える影響とは? 生産現場のトラブル解決にくわしい三菱電機コントロールソフトウェア株式会社(MCR)の林孝士さんに聞いた。
チョコ停で生産効率はどれだけ悪化する?
林:生産現場に伺って、設備管理をしている方に『チョコ停、なくなるといいですね』とお話しすると、みなさん口をそろえて『そのとおり!』と。つまり、チョコ停はどこの現場でも頻発する、製造業における共通の悩みなのです。
どの現場でも日々、チョコ停の原因を分析し、改善活動を行っているが、それでもチョコ停はなくならない。
ある機器がチョコ停を起こす確率は月1回だとしても、同時に100台の機器を使ったとすれば、チョコ停は月100回、1日あたり3回は起きる計算になる。仮にチョコ停1回あたり5分間機械を止めたとしても、1日3回起きれば毎日15分のロス。1日8時間稼働する工場であれば3%、24時間フル稼働の工場でも1%の歩留まり悪化につながる。
生産効率の問題だけではない。チョコ停のせいで生産目標をクリアできなければ、残業ばかりか工員の負担も増え、人件費がかさむ。
林:さらに恐ろしいのは、何らかの理由でチョコ停が重なり、『ドカ停』に発展することです。明確な定義はありませんが、チョコ停が分単位の停止であるのに対して、1時間を超えるとドカ停(ドカッと停止)ということが多いようです。最近は、1時間単位で生産管理をする工場が大多数。1時間のうちに製品がひとつもできなかったら大問題になってしまいます。
「ミランダVR」で機械の中身を見える化
その場は一時的であっても、積み重なるほどに大きなダメージとなるチョコ停。その原因解析や再発防止に貢献するのが、MCRが開発した「Miranda-VR(以下、ミランダVR )」だ。「ミランダVR 」は工場内の監視カメラとシーケンサ(※1)のデータを同期して記録・再生できるソフトウェア。すでに製鉄、自動車、機械、製紙など幅広い業界で、さまざまな製品の生産現場に取り入れられている。
「ミランダVR」がどのようにチョコ停防止に役立つのか、ある弁当工場でのデモンストレーション画像を見せてもらった。
林:チョコ停が起きるとシーケンサが受信する信号が乱れて、グラフにも乱れが出ます。その部分にグラフ上の赤い線をドラッグして移動すると、チョコ停が起きた瞬間の映像とデータが再生され、チョコ停が発生したときにどの機械に何が起こっていたのかを瞬時にチェックできるのです。
データは数時間から、最大1カ月程度まで保存できる。例えば24時間稼働する工場でAチームからBチームにシフト交代をする場合、これまでは日誌や口頭でチョコ停の発生状況を伝えるしかなかった。しかし、「ミランダVR」を活用すれば、「何時にどんなトラブルがあり、どう対処した」と引き継ぐだけでいい。くわしい状況が知りたくなったら、「ミランダVR」でその時間の映像とデータを簡単に再生できるからだ。
さらに、過去の映像をズームアップして見られるので、トラブル発生のシーンをじっくりチェックできる。
「ミランダVR」導入後にトラブルが発生。映像で状況を確認しつつ、トラブルの原因追求とか以前にあたったことで、業務効率の向上になったと言われることもあるという。
※1 シーケンサはプログラムどおりにモノを制御し、動かすための機器のこと。シーケンサは三菱電機の呼称で、一般には「PLC/プログラマブル・ロジック・コントローラー」などと呼ばれる。
「いちばん怖いのは“だんまり停止”」
チョコ停が起きた場合、アラームが出て生産ラインが止まるのはまだましだ。厄介なのは、機械が停止しているのにセンサーの不具合などによってアラームが出ない「だんまり停止」。生産現場で実際にあるトラブルのひとつだ。
林:通常、アラームは異常な動きを検知した場合に発動します。ですから、停止については異常とは見なさず、アラームを発動しないことも多いのです。これに対してあるお客さまから『止まったことを知らせるアラームもあればいいのに』と指摘されました。なるほどと思い、早速『ミランダVR』にタイムアウト監視という機能を搭載しました。
タイムアウト監視とは、設定時間内に決められた動きがないときに発動するアラームのこと。このように、『ミランダVR』は現場からの要望に応えて機能改良を積極的におこなっているという。
林:『ミランダVR』は、現場の状況を映像とデータによって『見える化』することに成功しました。今後は、現場をさまざまな観点で分析する『観える化』によって得られる情報を活用し、熟練工や技術者の負荷を減らしながら生産性改善に貢献できるのでは、と期待しています。
今後は波形分析の技術を取り入れるなどして、機器の状態を診断し、予知保全につながる機能も搭載したいと考えています。例えば、過去のデータに基づいてシーケンサの動きが正常値から外れそうだと予知できれば、トラブルの防止にさらに役立つはずです。
現場の声をヒントに、柔軟に進化していくソフトウェア「ミランダVR」。生産現場において、その活躍の場はますます増えていきそうだ。