最近、よく耳にするキーワードの一つが「換気」だ。店舗やオフィス、高齢者施設など、大人数が集まる場所では、換気扇を回す、ドアや窓をこまめに開けるなどの換気がすでに積極的に行われるようになっている。しかし、工場や倉庫、体育館などの大空間の場合は、ただ窓を開けるだけでは全体の空気が入れ替わらない。そこで気流のプロに、そういった大空間を効率よく換気するためのテクニックを取材した。
INDEX
- 大空間の換気 注目が集まる背景
- 大空間の換気の課題とは
- 大空間を換気するための3つのポイント
大空間の換気
注目が集まる背景
厚生労働省は2020年4月、商業施設などの管理者に対して「『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気の方法」を通達した。それによると、クラスター(集団)感染発生リスクの高い状況の回避策の一つとして、「機械換気(※1)」によって、必要換気量(1人あたり毎時30立方メートル)を確保することが推奨されている。
※1 機械換気……換気扇などの電気機器を使用した換気のこと。ちなみに窓を開けて換気することを「自然換気」という。
有吉:例えばオフィスビルなどは、床面積が広くても間仕切りがありますし、天井はそれほど高くないため、一般的な換気システムや窓の開放によって効率よく換気ができます。一方、倉庫や工場、体育館のような大空間の場合は、換気に必要な空気の量が桁違いに多く、しかも壁から中央部までの距離が長いので、壁際の換気扇や窓を使ったとしても空間全体の気流をコントロールしないと充分に換気ができません。

大空間の換気の課題とは
インターネット通販の拡大などにより、日本国内では近年、大規模な倉庫が続々と建設されている。物流の効率化のため、倉庫は物資の保管だけでなく、梱包や発送作業などにも使われるようになった。多くの物資が所狭しと積載されている倉庫では、ただでさえ空気の通り道を確保するのが難しいが、人間が内部で働いている以上、換気は確実に行わなければならない。

大空間を換気するための
3つのポイント
強力な換気扇による給排気
倉庫や工場、体育館などの大空間を確実に換気するためには、3つのポイントがある。その1つが「強力な換気扇による給排気」だ。
大野:大空間の換気には、強力なモーターを組み込んだ「有圧換気扇」がよく使用されます。有圧換気扇は通常の換気扇と比べて風を押し出す力が強いため、倉庫や工場など、非常に多くの換気風量が必要とされる場所でもパワフルな排気や給気が可能です。大空間では有圧換気扇を天井近くに設置するのが一般的です。給気用と排気用があり、両方を組み合わせると効率よく換気できます。 産業用有圧換気扇


大野 俊也
2012年から業務用・産業用の換気扇を担当。ビルなどの換気に用いられるダクト用のファンから、大空間に用いられる大型のファンまで、さまざまな換気扇を設計している。


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有吉:大空間の風の流れをコントロールして、狙い通りの気流を作り出せるのが、エアー搬送ファンの得意分野です。より広い空間の場合、複数のエアー搬送ファンによって滞留している空気をリレーしながら目的地(排気扇)まで送り届けることもできます。
プロフェッショナルが気流を設計する
大空間の換気、最後のポイントは「気流の設計」だ。空気は目に見えないだけにコントロールするのが難しい。そこで有吉さんらは「気流コンサル活動」と銘打って、顧客から換気についての悩みをヒアリングしつつ、現場に出向いて現状の室温や空気の流れを確認。大空間に最適な気流づくりを提案する。エアー搬送ファンの実機を現場に持ち込み、「これくらいの風が出て、気流がここまで届きます」と、体感してもらうこともある。

有吉:全国で気流コンサル活動をするなかで、私たちは広さも用途もさまざまな建物を経験し、それぞれに合った気流づくりを提案してきた実績があります。大空間の換気についてお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
大野:新鮮な空気をつねにたっぷりと取り入れられる快適な空間を作り出すにはどうすればよいか、一緒に考えさせていただきたいです。
