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金沢工業大学様
熱電連携DCマイクログリッド※1の実証実験に
「GENESIS64™」を導入

金沢工業大学「GENESIS64」篇
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      金沢工業大学は、株式会社成宏電機(石川県小松市)と共同で、「熱電一体の再生可能エネルギーによる直流マイクログリッドシステム」を白山麓キャンパスに構築し、2018年から現在に至るまでさまざまな実証実験を行ってきました。
      オフグリッドマネジメント※2によるエネルギーの地産地消や、エネルギーレジリエンス※3の向上を主目的としたこのプロジェクトで、システムの可視化に大きく貢献しているのが三菱電機のSCADAソフトウェア「GENESIS64™」です。
      本プロジェクトでは、地元石川県の再エネによるコージェネレーション(熱電供給)を取り入れ、直流の電力供給網を確立。
      さらにEVや人工知能(AI)を活用することにより、交流商用電源系統が停電した際も、一瞬の停電もなく瞬時に電力自立供給に移行できることを実証してきました。
      こうした取り組みにGENESIS64™が何を期待されてきたのか、そして三菱電機に今後何を期待しているのか。
      今回は金沢工業大学の泉井教授と、株式会社成宏電機の夏梅社長に伺いました。

      ※1マイクログリッド:小規模発電網 / 電力の供給源と消費地を一定の小規模な範囲でまとめる構想

      ※2オフグリッド:電力会社などの送電網につながっていない電力システム / 独立電源 

      ※3エネルギーレジリエンス(電力レジリエンス):自然災害や人為的な事件などのストレスに対してどの程度強く、迅速に回復できるかという電力供給システムの強靭さ

      金沢工業大学
      工学部 電気電子工学科
      教授 工学博士
      泉井 良夫さん
      株式会社 成宏電機
      代表取締役社長
      第2種電気主任技術者/エネルギー管理士
      夏梅 大輔さん

      近年多発する自然災害を背景に、
      ますます重要になっている
      エネルギーの地産地消

      「石川県では2022年に梯川水系の氾濫、また2024年1月1日に能登半島地震が起こりました。それ以前では、石川県以外でも北海道でブラックアウト、千葉県や九州地方で台風による大規模停電が発生しています。
      自然災害で電気が止まると、人々の生命と経済が危機的状況に陥ることから、近年、声高に言われているのがエネルギーレジリエンスの強化です。
      より強靭な電力供給体制を構築するために、オフグリッドマネジメントによるエネルギーの地産地消が大変注目を集めています」と、ここ数年の動向を解説する泉井教授。

      「今年の1月1日、私は家族と一緒にショッピングセンターで地震に遭いました。
      発災直後から近隣でも停電が起こり、自然災害は非常に身近なんだと痛感。
      従来の集中型発電と長距離送電というモデルがこの先成り立つかを考えた時に、私たちが今目指しているようなエネルギーの地産地消、オフグリッドでマネジメントするシステム構築の重要性を、非常に強く感じる年になりました」と、自身の体験を交えて話す夏梅社長。

      現在も白山麓キャンパスで、
      数々の実証実験が進行中

      ――泉井教授にお聞きします。本システムのポイントは?

      「DCマイクログリッドシステム最大のポイントは「つくる、送る(貯める)、使う」という電気の流れを直流で統一したことです。
      太陽光発電では直流の電気が発生しますが、電力会社はこれを交流に切り替えて送電します。
      ここでは直流のまま送電しますので、発生した電気はそのまま送り、使う際もそのまま直流で使用します。
      安定的で停電しにくい特徴を持つ直流で統一することが、強靭さという点ではベストと考えてシステムを構築したわけです」。

      DCマイクログリッド

      *特定領域内における独自の自律的エネルギー供給網である「熱電一体の再生可能エネルギーによる直流マイクログリッドシステム」を構築。大学キャンパス内の寄宿舎最寄りの屋根にソーラーパネルを設置し、発電した電気を電気自動車に貯めて移動。災害時、キャンパス内であれば双方向充電器を活用して電力利用が可能となる。また、太陽光発電の不安定さ解消に活用するため、間伐材活用のバイオマスボイラを導入。クリーンで高効率かつ安定的な熱と電気の供給と消費を実証した。同取り組みは再生可能エネルギーベストミックスのコミュニティモデル実証実験として実施。非常時対応はもちろん、平時における再生可能エネルギーのシェア等、エネルギーの効率的な活用とゼロ・カーボンの実現を目指す。

      ――非常にユニークな実験も見られますが。

      「面白いところだと電動自転車ですね。走行しながら発電して、けっこう電気を貯めることができます。
      停電時には、皆さんがお持ちのタブレッドやスマホ数十人分がこの充電によって使える状態になりますので、状況によっては大変大きな存在になります」。

      ――熱も積極的に利用しているとお聞きました。

      「冷暖房をはじめ、私たちは日々電気を使っていますが、電気の元は熱ですよね。
      ですから発生源である熱はそのまま使ったほうがいいというシンプルな発想です。
      本システムではバイオマスボイラを取り入れています。森林組合さんにも協力いただき、廃材を中心に地元産の木材を燃料としたコージェネレーションで、環境にも優しく、地域の産業振興にも貢献しています」。

      ――そして電気の輸送にはEVも活用されていると。

      「EVを災害時に電池として使うケースは以前からありました。
      しかしEVで計画的に電気を貯め、停電地域へ積極的に移動させて電力供給するという取り組みは意外となかったんです。
      2019年の房総半島台風で初めて能動的に実施され、白山麓キャンパスでは学生たちが今、太陽光発電とEVによる電気の輸送についてさまざまな実験を行っています」。

      学生の皆さんにおいても、学びが多かった様子。
      「エネルギーの地産地消という発想があることを、研究室に来るまで知りませんでした。
      太陽光で発電して、停電箇所にEVを蓄電池として持って行く実験を実際にやってみて、こういう使い方があるんだととても驚きました」と、体験談を話す比嘉開成さん。

      「私は今太陽光の発電と蓄電について、予測システムを活用し、その結果から精度や誤差を算出しグラフを作って比較しています。
      さらに誤差の原因を追求しているのですが、そこがとても難しいです」と、実験の難しさを話す早垣慶太さん。

      比嘉 開成さん
      早垣 慶太さん

      実証実験のカギは、
      多種多様なデータをいかに
      収集・分析し可視化するか

      「まず大前提として、可視化しなければ私たちは何も分かりません。
      DCマイクログリッドシステムは、三菱電機のPLCという装置を使ってデータを集めていますが、これは数字の羅列です。
      2秒ごとに蓄積されるので膨大なデータになりますが、この分析結果を直感的に解りやすく、直ちに可視化してほしい。
      そういうオーダーにGENESIS64™が非常に役立っているわけです」。

      つづけて可視化の重要性について話す泉井教授。

      「かつ1カ所だけではなく、複数地点を同時に可視化して、関係性を見るというのが重要になります。
      直流の電力網がどれくらい安定的か、ロスが少ないか、逆にロスがあるとすると何が原因か、エネルギーをコントロールするためにも可視化は不可欠なのです」。

      FA分野で確かな実績を
      積み重ねている三菱電機の「GENESIS64™」を導入

      ――夏梅社長にお聞きします。三菱電機のGENESIS64™を導入された理由は?

      「最大の理由は拡張性になります。
      私たちが構築したシステムは、送電網の先に設備(空調など)をつなげて実生活の場に拡張していく必要があります。
      三菱電機は設備にも幅広い商材を持っているので、そこに大きなアドバンテージがあると思い導入時にレコメンドしました」。

      「タイムリーにセキュリティを更新していく必要も当然ありまして、従来のSCADAソフトは対応できないんですよね。
      家電から宇宙衛星まで扱う三菱電機は、セキュリティにも非常に幅広いアンテナを持っているわけで、最新の安全規格やグローバルスタンダードという点で大きな安心感がありました」。

      「拡張性の話に付け加えると、私たちは研究開発をしているので、過去にない新しい機能を導入して評価したいという場面が出てきます。
      今回でいえば、バイオマスが後に加わった機能ですが、これは三菱電機の先端技術総合研究所と共同研究しているテーマでもありました。

      そうした中でGENESIS64™につなぐわけですが、一般的な監視制御システム(SCADAソフト)ですと難しい場合が多いです。
      その点GENESIS64™は、三菱電機から機能を加える丁寧な説明もいただき、驚くほど簡単に実現しました」と、機能を拡張した当時を振り返る泉井教授。

      システム開発時に
      積み重ねた丁寧なやりとり

      「プロジェクトチームのニーズとして、誰が見てもエネルギーの流れや蓄電量が視覚的にわかる、BIライクな見え方というのがありました。
      動きがあり、3次元で立体的に表現する美しい見え方です。
      モニタをエントランスに置くことも計画していましたので、人目を引く最新型のビジュアルツールにするということにこだわりました」と、開発当時を振り返る夏梅社長。

      ――夏梅社長は開発者ともやりとりされたと。

      「そうですね。外国人の開発者も呼んでいただき、技術的なディスカッションの場も作っていただきました。
      非常に技術者が近い、ここも三菱電機を採用した大きなポイントだと思っています。
      FAの分野ではマニュアルを見てくださいという対応も多いのですが、三菱電機は目の前に開発者がいるような、仕事がとてもやりやすい環境を提供してくれました」。

      ――回数も大変多かったとお聞きました。

      「エクセルで技術的なやりとりを、QA形式でキャッチボールしまして、約100件の履歴が今もしっかり残っています。
      それはもう貴重なファイルで、私たちとしても後で振り返ることができますし、後進の育成などにも有意義に活用させていただいています」。

      新製品の難点を
      感じさせなかったレスポンス

      「システムが稼働し始める直前は、さまざまな設定作業が必要なのですが、自分たちの力で設定方法を探しても、新製品なので検索しても見つからず、そこはちょっと苦労しました」と、稼働直前の苦労を振り返る夏梅社長。

      「本格稼働後も、研究開発の新たな機能を加える際に、データをどう吸い上げるか、制御指令をどう与えるか、どう書き込むかなど、私たちにノウハウがなかったので、三菱電機にいろいろ教えてもらうことになりました」と、稼働後の苦労について話す泉井教授。

      「でも三菱電機の岡田さんに問い合わせると、どうすればいいのか非常に親身になって答えてもらったことを思い出します。
      工場の技術メンバーも巻き込んで、ひとつのプロジェクトを達成するために尽力いただき、非常にありがたいことだと思っています」と、笑顔で話す夏梅社長。

      「非常にレスポンスが早いですね。
      私たち大学は、特殊なものを1つだけ導入するということがあるため、手間がかかって面倒くさいという側面もあります。
      たとえばトラブルがあってメールを送ると、1~2週間待たされることも。
      でも三菱電機は30分くらいで返信が来ていました。
      諸問題も打てば響くという応答をいただき、いち早く解決できていました。
      さらに回答に加え、私たちがどうしたいかを予測して的確なアドバイスをくれます。
      これも非常にありがたかったですね」と、笑顔で振り返る泉井教授。

      また三菱電機の岡田さんもこれまでの思いを交えて、このように語ってくれました。
      「三菱電機としてもSCADAソフトは初めてで、リリース直前のタイミングで、いの一番に皆さまに誘っていただきこのプロジェクトが始まりました。
      今回は、泉井教授と夏梅社長に一緒に作り上げていただいたという思いを強く持っています。
      ですから我々としましては、できる限り、どんなことでもお役に立てればという気持ちで、全力で対応させていただきました」。

      さらなるパートナーシップと、
      次なる提案に期待

      ――泉井教授の今後の展望をお聞かせください。

      「実は私たちの同じような研究が、白山麓キャンパス以外でも進行していまして、他のキャンパスでもGENESIS64™を実装したいという思いがあります。
      離れた場所で総合的に可視化できる機能があるそうなので、まとめて見ることでさらに成果を上げていきたい。
      そういう意味では三菱電機とより強力なパートナーシップで、これから共に成長していけたらと思っています。
      また私たちは研究機関でもありますので、DCマイクログリッドで得られた知見を共有するなどして、今後FA、電力、家庭と、さまざまな分野でカーボンニュートラルに資するような環境活動が三菱電機と一緒にできることを期待しています」。

      ――夏梅社長は三菱電機に今後何を期待しますか?

      「以前マイルストーンをお伺いした時に、GENESIS64™だけではなく、その次の話も聞かせてもらいました。
      可視化した後の予知保全、あるいは人間が習得してきたノウハウのデジタル化など、見える化だけではない、考える、自立するという次の領域についてです。
      ですから私は、三菱電機のMELSOFT MaiLabに代表される機械学習、データサイエンスのDXソリューション、その提案にとても期待しています」。

      (左から)比嘉さん、泉井教授、夏梅社長、早垣さん

      ※本記事内の製品やサービス、所属などの情報は取材時(2024年7月)時点のものです。